インタビュー記事(続き)

◆「マインドフルネス」と「ハコミセラピー」とは

色んな考え方がありますが、マインドフルネスとはひとつの意識状態だと私は思っています。たとえば、カメラで写真を撮ると色んなものが写り込みますし、録音をすると雑音もたくさん入っています。その中でも人間はうまくできているもので、自分がフォーカスしたものしか見ていないし、聞こえていないし、憶えていません。

実は人間の感情、感覚も同様で、どんな時でも色んな香りを感じていたり、色んな温度を感じていたり。想像以上にたくさんのことを常に感じていますが、フォーカスすることなく日常を過ごしています。そこで、改めて目を閉じてみると、自分の体の感覚や内面で湧き上がってくる感情や感覚があることに気づくことができます。 これらにていねいにフォーカスしていくのがマインドフルネスです。

更に、このマインドフルネスの意識状態をベースに、出てきたネガティブな感情・感覚にもう少し積極的にアプローチをしていくために、ハコミセラピーの技法を利用しています。出てきたものを自分自身で受け止めていったり、処理をしてデトックスしたり。ポジティブな感情が出てくることもありますから、その時は出てきたものをじっくり味わって自分の中に根付かせて心の元気が出るようなお手伝いをします。

◆感情はくしゃみ、鼻水と一緒

ネガティブであろうとポジティブであろうと、感情、感覚というのは自然と感じてしまうものです。マイナスなことを感じてはいけないと頭では思っても、感情はくしゃみや鼻水のように自分でコントロールできるものではありません。無理に押し込めようとしても、「感じている自分の状態はダメだ」というふうにかえって落ち込んでマイナスを繰り返すサイクルに入ってしまいます。 

マイナスの感情・感覚は出てくる必要があって出てきていますし、出たくて出てきていると捉えます。無理矢理押し込めてしまうことや、中途半場に出すのではなく、きちんと出すことで終わりになると考えています。今まで押し込めていたものを、マインドフルネスと言う感情・感覚に飲み込まれない状態でフォーカスしていくことで、ゆっくりと終わらせて自分で処理できるようになります。 

◆ストレス解消には「デトックス」と「サプリメント」が必要

ストレスの解消、不快な感情の解消というのは、「デトックス」と「サプリメント」の2本立ての方向性で考えていくべきだと思います。ポジティブな感情が出てきた時は、体にゆっくりと感情を染み込ませて、効果的にたっぷり感じていく。いわゆる、いい香りを嗅いだり、おいしいものを食べたり、癒やしのサプリメントの部分です。ネガティブな感情が出てきた時は、「嫌なものは嫌だ」「とても嫌な気持ちだった」ということを吐き出していく。心理カウンセラーの仕事は、感情の処理を手伝う、ごみ処理係のおばちゃんです!(笑)

◆ダメな行動はあってもダメな人間はいない

人は悩んでいるとき、自分のことを責めてしまいがちですが、やってはいけないダメな行動はあっても、ダメな人間は誰ひとりとしていないはずです。例えば、作ったうどんを人に出して「ちょっとしょっぱいよ。」と言われた時、味付けがダメなだけであって、作った自分自身がダメなわけではありませんよね? うどんの味付けがダメだったのと、うどんを作った自分がダメかどうかは全く別のことだからです。

しかし、人は悩んでいると行動や状況がダメだったのではなく、自分は人間としてダメだと思ってしまいます。それは、かつて失敗した時に、誰かに「ダメな人間」だと見られてしまった経験があるからです。周囲の人や他の人から見られた自分への見方を取り入れてしまうことで、自虐的な捉え方が根付いてしてしまうのです。

それは持って生まれたものではありませんから、マインドフルネスを含めて、自分の捉え方を観察していくこと、受け止めていくことで終わりにできます。私自身も変わることができたので、誰でも変われる! とそういう応援をしていければと思います。

◆感情を受け止められる自分が育ち始めている

これからは幅広く色々な方々に、自分の感情を観察することで、感情を自己処理できる方法としてを¥マインドフルネスを伝えていきたいと思います。
マインドフルネスを使えば、ある程度の大きさの感情であれば自分でも処理できるようになりますし、いわゆる「気づき」も得ることができます。

個別トレーニングでは、トレーナーである私が一対一で見守りながらリードをとり、ディープなものに触れてもの見方・感じ方を変えていくトレーニングを行っていますが、一人で自宅でもできるようになる指導も必ず行います。指導した方は、比較的簡単にご自分でもセルフトレーニングをされています。このセルフトレーニングが、感情観察法のマインドフルネスです。簡単にできるものですから、名前ほど難しいものではなりません。(笑)気軽に自分でできるストレス解消法だと思ってください。

マイナスの感情や違和感が出てくるということは、すでにその感情を受け止められる自分が育ち始めているということです。自分の内面に出会っていくというのは、それがマイナスの感情であっても、終わりにできるだけのこころの力が大きくなってきている証拠です。それを見失わずにお手伝いしていくのが私の仕事です。

「私が悩みを持つ方の前でも揺らがずにいられるのは、自分自身が乗り越えてきた体験があるから」「人は自分が乗り越えたところは確実にサポートできる」と語る佐藤さんは、ご自身の変化の経験から「相手が変わろうとしている力にフォーカスしてお話を聞く」ことができるのだそうです。「人間成長という意味では、人は前にしか進まない」からこそ、「必ず次のステージが用意されている」と「信頼して見守ることができる。」、
そして「自分がどんどん人として成長していかなければいけない厳しい仕事」とはしながらも、「目の前の方の変化を通してこれだけの感動と喜びを味わえる仕事は私にとって他にはない」とお話してくださいました。